標本空間
何を「1つの結果」とするかで、計算の難易度が変わる
できるようになること
- 標本空間を設計できる(何を1つの結果にするかを決められる)
- 起こりうる要素を抜けもれなく列挙できる
- 等確率の標本空間と非等確率の標本空間を区別し、混同しない
身近な問い:サイコロを2回振る
まずは、直感で答えてみてください。
答えを見る
Q1をどのように考えたか
- 全部で何通りあるかを計算した
- 合計が3以下になる組み合わせを探そうとした
- 起きうる結果を書き出した
どれも自然な考え方です。
まず全体を考える
確率を計算するためにまず何が起こりうるかはっきりさせる必要があります。 つまり、起こりうる結果を抜けもれなく数え上げることが、この後の確率計算の土台になります。 この全体を標本空間(sample space)と呼びます。
標本空間とは
試行:サイコロを2回振る
結果:(1回目, 2回目) の出目
として記録すると、起こりうる結果全体は次の36通りです。
このような起こりうる結果全体のことが標本空間です。
「合計の値」を標本空間にするとどうなるか
「出た目の合計」は 2〜12 のいずれかになります。では {2, 3, …, 12} を標本空間として使ってよいのでしょうか。
結論から言えば、標本空間にしてもよいです。 ただし、そのまま「数える」と確率を間違えます。
たとえば、「合計7」になるのは (1,6)(2,5)(3,4)(4,3)(5,2)(6,1) の 6通り。
一方で「合計2」になるのは (1,1) の 1通りだけです。
{2, 3, …, 12} の各要素は等確率で起こるわけではないため、「12通りあるから各々1/12」という計算は成り立ちません。
等確率でない要素を等確率として扱うと、確率の計算結果そのものが誤りになります。
等確率の標本空間を選ぶ利点
(1回目の目, 2回目の目) を1つの結果とし、36通りを標本空間にすると、各要素はすべて等確率(1/36)で起こります。
等確率の標本空間では、確率の計算が「条件を満たす要素の個数 ÷ 全体の個数」で済みます。 逆に、等確率でない標本空間では、各要素の発生確率を個別に把握する必要があります。
Q1 の答えが 3/36 と出せたのも、この設計があるからです。
この要素たちは等確率で起こるか?——これが標本空間設計の判断軸です。
よく見る標本空間のパターン
標本空間のパターンは大きく3つあります。まずはAを使えるようになればOKです。
| 分類 | 特徴 | 確率の求め方 | 追加で必要な作業 |
|---|---|---|---|
| A. 等確率 | 全要素が同じ確率で起こる | 条件を満たす個数 ÷ 全体の個数 | なし(数えるだけ) |
| B. 非等確率 | 要素ごとに起こりやすさが異なる | 各要素の確率を加算 | 各要素の発生確率を求める |
| C. 無限 | 結果が数え切れない | 級数・積分など | 無限和や積分の計算 |
A. 等確率(数え上げ=そのまま確率に直結)
例1:サイコロ1回
- 標本空間:
{1, 2, 3, 4, 5, 6} - 6要素が等確率。「目が偶数」の確率は 3/6 と数えるだけ。
例2:サイコロ2回(順序あり)
- 標本空間:
{(1,1), (1,2), …, (6,6)}(36個) - 36要素が等確率。Q1 はこのパターン。
各要素がどれも同じ確率で起こりうるか確認しましょう。コインや公正なサイコロなら基本的にAです。
B. 非等確率(数えるだけだと計算できない)
例:サイコロ2個の合計
- 標本空間:
{2, 3, …, 12}(11通り) - 要素ごとに「起こりやすさ」が異なるため、等確率として扱えない。
- 使うなら「各合計の確率」まで含めて管理する。
要素を集約・まとめた場合はBになりやすいです。等確率に疑いがあればAに作り直しましょう。
C. 無限(起こりうる結果が終わらない)
例:表が出るまでコインを投げる
- 標本空間:
{表, 裏表, 裏裏表, 裏裏裏表, …}(終わらない) - 標本空間は作れるが「数えるだけ」では確率を求められない。級数などの道具が必要。
まとめ
標本空間とは、試行で起こりうる結果を抜けもれなく集めたものです。
標本空間を設計するときに最も重要なのは、「各要素が等確率で起こるか」という視点です。
等確率であれば、確率は「条件を満たす個数 ÷ 全体の個数」と数えるだけで求められます。
等確率でない要素を等確率として扱ってしまうと、確率の計算結果そのものが誤りになります。合計値のような「まとめた値」を標本空間にするときは、このリスクに特に注意してください。