分布表とパーセント点の使い方

分布表から臨界値を引く方法を身につける

難易度 Lv 2 / 10想定時間:約15

できるようになること


「棄却できる?」に答えるために

検定統計量が z=2.15z = 2.15、有意水準 α=0.05\alpha = 0.05(両側検定)が分かったとします。このとき、帰無仮説を棄却できるをどう判定すればよいでしょうか。

この問いに答えるには、「有意水準5%で棄却するための境界の値(臨界値)はいくつか」を知る必要があります。この臨界値のことをパーセント点と呼び、分布表から読み取ることができます。

この単元では、分布表の仕組みと読み方を整理します。


パーセント点とは

P(X>xα)=αP(X > x_\alpha) = \alpha を満たす値 xαx_\alpha を、上側 α\alpha パーセント点と呼びます。

つまり、「確率変数がその値を超える確率がちょうど α\alpha になる点」です。

P(X>xα)=αP(X > x_\alpha) = \alpha

たとえば標準正規分布の上側5%点は z0.05=1.645z_{0.05} = 1.645 です。これは P(Z>1.645)=0.05P(Z > 1.645) = 0.05 を意味します。

補足

添字の α\alpha上側確率を表します。z0.05z_{0.05} なら「右側に5%の面積が残る点」です。教科書によっては下側確率(左側に 1α1 - \alpha の面積)で表記することもあるため、どちらの確率を指しているか必ず確認してください。


標準正規分布表

標準正規分布は左右対称なので、上側と下側の臨界値は符号を変えるだけで求められます。

z1α=zαz_{1-\alpha} = -z_\alpha

上側確率 α\alphaパーセント点 zαz_\alpha用途の例
0.101.282片側10%
0.051.645片側5%
0.0251.960両側5%(α/2=0.025\alpha/2 = 0.025
0.012.326片側1%
0.0052.576両側1%(α/2=0.005\alpha/2 = 0.005

冒頭の問い(z=2.15z = 2.15、両側5%)に戻りましょう。両側検定では α/2=0.025\alpha/2 = 0.025 に対応する点を見ます。z0.025=1.960z_{0.025} = 1.960 なので、棄却域は z>1.960|z| > 1.960 です。2.15=2.15>1.960|2.15| = 2.15 > 1.960 なので、帰無仮説を棄却できます


t分布表

t分布は正規分布と同じく左右対称ですが、自由度ごとに形が変わるため、表は「自由度 × 上側確率」の2次元になります。

自由度 ν\nu\上側確率0.100.050.0250.010.005
51.4762.0152.5713.3654.032
101.3721.8122.2282.7643.169
201.3251.7252.0862.5282.845
301.3101.6972.0422.4572.750
\infty1.2821.6451.9602.3262.576

自由度 \infty の行が標準正規分布に一致していることを確認してください。自由度が小さいほど裾が重い(臨界値が大きい)ことが表から読み取れます。

t分布も左右対称なので、下側の臨界値は tα(ν)-t_\alpha(\nu) です。


カイ二乗分布表

カイ二乗分布は0以上の値しか取らず、左右非対称です。そのため、上側と下側で別々に臨界値を引く必要があります。

自由度 ν\nu\上側確率0.9750.950.050.0250.01
50.8311.14511.0712.8315.09
103.2473.94018.3120.4823.21
209.59110.8531.4134.1737.57
3016.7918.4943.7746.9850.89
ポイント

カイ二乗分布表の添字は上側確率です。χ0.0252(10)=20.48\chi^2_{0.025}(10) = 20.48 は「自由度10で右側に2.5%の面積が残る点」を意味します。左側の列(上側確率が大きい列)ほど左寄りの臨界値(小さい値)になります。両側検定では上側(α/2\alpha/2)と下側(1α/21 - \alpha/2)の両方を引きます。たとえば有意水準5%の両側検定なら、χ0.0252\chi^2_{0.025}χ0.9752\chi^2_{0.975} を使います。


F分布表

F分布も0以上の値しか取らず、非対称です。さらに、分子の自由度 ν1\nu_1 と分母の自由度 ν2\nu_2 の2つの自由度を持つため、ν1\nu_1ν2\nu_2α\alpha の3つのパラメータに依存します。通常は α\alpha ごとに別の表が用意されます。

以下は上側確率 α=0.05\alpha = 0.05 のF分布表の抜粋です。一般的な教科書と同様に、列が分子の自由度 ν1\nu_1、行が分母の自由度 ν2\nu_2 です。

ν2\nu_2ν1\nu_1151020
56.6085.0504.7354.558
104.9653.3262.9782.774
204.3512.7112.3482.124
304.1712.5342.1651.932

F分布表は通常上側確率のみ掲載されています。下側の臨界値が必要な場合は、次の関係を使います。

F1α(ν1,ν2)=1Fα(ν2,ν1)F_{1-\alpha}(\nu_1, \nu_2) = \frac{1}{F_\alpha(\nu_2, \nu_1)}

つまり、自由度を入れ替えて逆数を取ることで下側の臨界値を求めます。

F0.95(5,10)F_{0.95}(5, 10)(分子5、分母10の下側5%点)を求めるには、F0.05(10,5)F_{0.05}(10, 5) を表から引いて逆数を取ります。

F0.95(5,10)=1F0.05(10,5)=14.7350.211F_{0.95}(5, 10) = \frac{1}{F_{0.05}(10, 5)} = \frac{1}{4.735} \approx 0.211


対称な分布と非対称な分布の違い

臨界値の求め方は、分布が左右対称かどうかで異なります。

対称(正規・t)非対称(カイ二乗・F)
右側検定上側 α\alpha 点を引く上側 α\alpha 点を引く
左側検定符号を反転(zα-z_\alphatα-t_\alphaカイ二乗:χ1α2(ν)\chi^2_{1-\alpha}(\nu) を引く
F:自由度入替 + 逆数
両側検定zα/2z_{\alpha/2}(や tα/2t_{\alpha/2})を引き、棄却域を z>zα/2|z| > z_{\alpha/2} とする上側 α/2\alpha/2 点と下側 1α/21-\alpha/2 点を別々に引く

分布表とソフトウェア

現代の統計ソフトウェアでは、パーセント点は関数1つで計算できます(Excelなら NORM.S.INVT.INVCHISQ.INV.RT など)。

それでも分布表の仕組みを理解しておく意義があります。

ヒント

ソフトウェアの関数は、入力が上側確率か下側確率かが関数ごとに異なります。たとえば NORM.S.INVT.INV は下側確率(累積確率)を入力するため、上側5%点を求めるには 10.05=0.951 - 0.05 = 0.95 を指定します。一方、.RT(Right Tail)がつく関数(CHISQ.INV.RT など)は上側確率 α\alpha を直接指定できます。


まとめ

パーセント点(上側 α\alpha 点)は、確率変数がその値を超える確率がちょうど α\alpha になる点 xαx_\alpha です。分布表はこの対応を、自由度や上側確率ごとにまとめた表です。

標準正規分布とt分布は左右対称なので、下側の臨界値は符号を反転するだけで求められます。一方、カイ二乗分布やF分布は非対称なため、両側検定では上側と下側の臨界値を別々に引く必要があります。F分布の下側臨界値は、自由度を入れ替えて逆数を取ることで求めます。

ヒント

検定で使う臨界値の引き方は、片側検定なら α\alpha、両側検定なら α/2\alpha/2 に対応する列を見ます。この関係は「棄却域と片側・両側検定」で詳しく学びます。