確率変数

結果を「値」に変換して、事象に確率を割り当てる

難易度 Lv 3 / 10想定時間:約20

できるようになること


確率変数は「値」ではなく「ルール」

確率とは、ある事象が起こる割合を表します。変数とは、値が固定されていないことを意味します。

では確率変数とは何でしょうか。

確率変数(random variable)は、結果 ω\omegaX(ω)X(\omega) という値に変換するルール です。 さらに X(ω)=xX(\omega) = x となる結果の集まり(事象){ωX(ω)=x}\{\omega \mid X(\omega) = x\} に対して確率を割り当てます。

例えばサイコロを1回振るとき、結果は 1, 2, 3, 4, 5, 6 のいずれかです。 この結果から、複数の確率変数を作ることができます。

同じ試行でも、どのルールで値に変換するかを変えれば、確率変数は変わります。 この単元では、XXX=3X=3{X=3}\{X=3\}33 を混同せずに説明できるようになることを目指します。

確率変数は写像である

標本空間を Ω\Omega とします。確率変数 XX は、結果 ω\omega を実数へ対応させる写像です。

X:ΩRX : \Omega \rightarrow \mathbb{R}

結果 ω\omega が決まれば、X(ω)X(\omega) は値として決まります。

P(X=3)P(X=3) は何の確率か

各記号や数式が何を意味するかを整理します。

P()P(\cdot) が割り当てられるのは値そのものではなく事象です。厳密には、

P({X=3})P(\{X = 3\})

のように書きます。

ただし確率の文脈では X=3X = 3 を「{X=3}\{X = 3\} という事象」の省略として使うことが多く、一般に

P(X=3)P(X = 3)

と書きます。この P(X=3)P(X = 3) は、値「3」に確率をつけているのではなく、「XX の値が3になる」という事象の確率を表しています。

より丁寧には次を意味します。

P(X=3)=P({ωΩX(ω)=3})P(X = 3) = P(\{\omega \in \Omega \mid X(\omega) = 3\})

P(X)P(X)P(3)P(3) のような書き方はできない

P()P(\cdot) の中に入れられるのは事象です。一方で、

したがって、P(3)P(3)P(X)P(X) といった書き方は一般にできません。

ただし、次のように「事象の形」にすれば確率として意味を持ちます。

P(X3)=P({ωΩX(ω)3})P(X \leq 3) = P(\{\omega \in \Omega \mid X(\omega) \leq 3\})

P(XA)=P({ωΩX(ω)A})P(X \in A) = P(\{\omega \in \Omega \mid X(\omega) \in A\})

確率が付くのは常に ω\omega の集まり(事象)に対して である、という点がここでの核心です。

同じ結果から別の確率変数を作る

サイコロを1回振る試行を考えます。

Ω={1,2,3,4,5,6}\Omega = \{1, 2, 3, 4, 5, 6\}

各結果は等確率なので、

P({ω})=16(ω=1,2,3,4,5,6)P(\{\omega\}) = \dfrac{1}{6} \quad (\omega = 1, 2, 3, 4, 5, 6)

です。この標本空間 Ω\Omega 上で2つの確率変数を作ります。

確率変数 XX:出た目(そのまま値にする)

X(ω)=ωX(\omega) = \omega

このとき {X=3}={3}\{X = 3\} = \{3\} なので、

P(X=3)=P({3})=16P(X = 3) = P(\{3\}) = \dfrac{1}{6}

同様に、

P(X=x)=16(x=1,2,3,4,5,6)P(X = x) = \dfrac{1}{6} \quad (x = 1, 2, 3, 4, 5, 6)

となります。

確率変数 YY:偶数なら1、奇数なら0(別の値に変換する)

このとき、

{Y=1}={2,4,6},{Y=0}={1,3,5}\{Y = 1\} = \{2, 4, 6\}, \quad \{Y = 0\} = \{1, 3, 5\}

なので、

P(Y=1)=36=12,P(Y=0)=36=12P(Y = 1) = \dfrac{3}{6} = \dfrac{1}{2}, \quad P(Y = 0) = \dfrac{3}{6} = \dfrac{1}{2}

となります。

同じ試行(同じ Ω\Omega)でも、どのルールで値に変換するかを変えると、取り出す値も、その値が出る確率も変わります。 確率変数は「値」ではなく「結果を値に変換するルール」だ、という意味はここにあります。

まとめ

確率変数 は、結果 ω\omega X(ω)X(\omega) に変換するルールです。 確率が付くのは値そのものではなく、X(ω)=xX(\omega) = x となる結果の集まり(事象{ωX(ω)=x}\{\omega \mid X(\omega) = x\} であり、P(X=x)P(X = x) はその事象の確率を省略して書いたものです。

同じ試行でも、変換のルールを変えれば、取り出す値やその確率は変わります。

「結果」「確率変数」「値」「事象」を区別して読めるようにすることが、確率の記号を正しく追うための土台になります。