期待値
確率分布から「平均的な値」を1つにまとめる
できるようになること
- 期待値の定義式を使って確率分布から期待値を計算できる
- と を使って計算を整理できる
- 期待値とデータの平均の違いを説明できる
確率で重みづけする
確率分布があると、「平均的にどれぐらいの値になりそうか」を1つの数で表したくなります。
サイコロを1回振って出た目を確率変数 とすると、確率分布は次のとおりです。
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1/6 | 1/6 | 1/6 | 1/6 | 1/6 | 1/6 |
この分布ではどの目も同じ確率なので、値を足して個数で割る計算でも「平均的な値」が出ます。
一方で、確率が均等ではない場合はどうでしょうか。次の分布を考えます。
| 1 | 2 | 3 | |
|---|---|---|---|
| 1/2 | 1/3 | 1/6 |
このとき、値を足して個数で割るだけだと、各値の出やすさの違いが反映されません。
この違いを反映するためには、各値を確率で重みづけ する必要があります。 つまり、各値に確率を掛けて足し合わせます。これが期待値(expected value)の考え方です。
期待値の定義
離散型確率変数 の期待値は、次で定義されます。
連続型の場合は、和()が積分()に置き換わります。
ここで は確率密度関数です。積分や連続型の詳しい説明は連続分布の単元で扱います。
どちらも「値×その値の起こりやすさを足し合わせる」 という考え方は同じです。
期待値の意味(長期的な平均)
期待値は、同じ試行を何度も繰り返したときの平均に対応します。
サイコロをたくさん振り続けると、出た目の平均は 3.5 に近づいていきます。 これは大数の法則として知られています。
期待値は 「1回の結果」ではありません。 サイコロでは 3.5 という目は出ませんが、たくさん振ったときの平均は 3.5 に近づきます。
計算例(支払額の平均)
ある契約の支払額(万円)を確率変数 で表します。 「支払なしが多いが、まれに大きく支払う」ような分布だとします。
| 支払額 (万円) | 0 | 100 | 500 |
|---|---|---|---|
| 0.90 | 0.08 | 0.02 |
この例では「平均すると18万円の支払いが発生する」となります。
期待値には単位が付きます。ここでは が「万円」なので、 も「万円」です。
期待値の性質(よく使う2つ)
1. 定数倍と平行移動
、 を定数とすると、次が成り立ちます。
例えば なら、 です。 「値を2倍して1を足す」操作は、期待値にも同じように反映されます。
2. 線形性(和の期待値)
と が確率変数のとき、独立である必要はなく、次が成り立ちます。
例として、サイコロを2回振り1回目を 、2回目を とすると、 となります。
期待値とデータの平均の違い
期待値とデータの平均は似た概念ですが、計算の対象と計算方法が異なります。
| 項目 | 期待値 | データの平均 |
|---|---|---|
| 対象 | 確率分布(理論) | 観測データ(現実) |
| 計算 | 確率×値の和 | 合計÷個数 |
| 例 | サイコロの期待値は3.5 | 10回の平均は3.2などになり得る |
まとめ
期待値 は、確率分布から計算する「確率で重み付けした平均」 です。 同じ試行を繰り返したときの平均に対応しますが、1回の結果そのものを指すわけではありません。
よく使う2つの性質を確認してください。
これらの性質により、計算を分解・整理できる場面が多くあります。 また、期待値には単位が付くことにも注意してください。