加法定理
排反でないとき、どう足すか
難易度 Lv 2 / 10想定時間:約15分
できるようになること
- 加法定理の式を書いて、「A または B」の確率を計算できる
- 排反のときと排反でないときで計算方法を使い分けられる
- 加法定理を使う前に P(A∩B) が必要かどうかを判断できる
排反でないときはそのまま足せない
「排反と確率の足し算」の単元では、確率をそのまま足してよいのは排反のときだけ、という話をしました。
排反でないときにそのまま足すと、共通する部分が二重に数えられてしまうからです。
では、排反でないとき P(A∪B) はどう計算すればよいのでしょうか?
例題:排反でない「または」
A:「偶数が出る」、B:「3以下が出る」
という例を思い出してみましょう。P(A)、P(B) はそれぞれ、
P(A)=63,P(B)=63
と計算できます。ここで P(A)+P(B) とすると、「2」が二重に数えられてしまいます。
P(A∪B) を正しく計算するには、二重に数えられている部分(共通部分)を引く必要があります。
加法定理
排反でないときの「または」は、共通部分を差し引いて計算します。
これを加法定理(addition rule)といいます。
P(A∪B)=P(A)+P(B)−P(A∩B)

先ほどの例では A∩B={2} なので、
P(A∪B)=63+63−61=65
と計算できます。
加法定理がなぜ成り立つのか
A∪B は次の3つの排反な部分に分けられます。
A∪B=(A∩Bc)∪(Ac∩B)∪(A∩B)
これら3つは互いに排反なので、
P(A∪B)=P(A∩Bc)+P(Ac∩B)+P(A∩B)
また A、B はそれぞれ次のように分けられます。以上から、
P(A∪B)=P(A∩Bc)+P(Ac∩B)+P(A∩B)
=(P(A)−P(A∩B))+(P(B)−P(A∩B))+P(A∩B)
=P(A)+P(B)−P(A∩B)
が導かれます。
例題2:トランプから1枚引く
52枚のトランプから1枚引くとき、「ハートまたは絵札(J, Q, K)」が出る確率を求めます。
- A:ハート → ∣A∣=13(ハートは13枚)
- B:絵札 → ∣B∣=12(J, Q, K が各スート4色)
- A∩B:ハートの絵札 → ∣A∩B∣=3(ハートのJ, Q, K)
P(A∪B)=5213+5212−523=5222=2611
ハートの絵札3枚が共通部分なので、引かないと二重計上になります。
3つ以上の事象の「または」
事象が3つの場合、加法定理は次のように拡張されます(包除原理、inclusion-exclusion principle)。
P(A∪B∪C)=P(A)+P(B)+P(C)−P(A∩B)−P(A∩C)−P(B∩C)+P(A∩B∩C)
2つずつ重なる部分を引き、3つすべてが重なる部分を足し戻すことで、過不足なく計算できます。事象の数が増えると共通部分の計算が増えるため、排反に分けられないかをまず検討するのが効率的です。
加法定理を使うときの確認ポイント
加法定理を使う場面では、P(A) と P(B) に加えて P(A∩B) が必要になります。
実務では、P(A∩B)(両方が同時に起きる確率)を求めるデータや情報が手元にないことも多いです。
計算に進む前に次の点を確認してください。
- A と B は排反か?(排反なら P(A∩B)=0 なのでそのまま足せる)
- 排反でないなら、P(A∩B) を別途求められるか?
よくある誤解
「排反でないのにそのまま足してしまう」
加法定理を忘れて P(A)+P(B) だけで計算してしまうミスは非常に多いです。特に、2つの事象が「一見被らなそう」に見えるときに起きやすいです。計算に入る前に必ず、A∩B が空集合かどうかを確認してください。
「P(A∩B) を引けば常に正しい」
加法定理の式は正しいですが、P(A∩B) の値を間違えると意味がありません。P(A∩B) を求めるためには、A と B が独立かどうかの判断(詳しくは「事象の独立」の単元)や、条件付き確率の知識が必要になる場合があります。
まとめ
排反と排反でない場合をまとめると、排反(A∩B=∅)のときは P(A∪B)=P(A)+P(B)、排反でない(A∩B=∅)のときは P(A∪B)=P(A)+P(B)−P(A∩B) となります。
「A または B」の確率を求めるときは、まず排反かどうかを確認してから計算に入ることが大切です。
排反でない場合は P(A∩B) が追加で必要になります。3つ以上の事象では包除原理を使います。